霜 – 百人一首note

6. かささぎの 渡せる橋に 置く霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける / 中納言家持

 

6. かささぎの 渡せる橋に 置く霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける / 中納言家持(ちゅうなごんやかもち)

(読み)かささぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よぞふけにける

(訳)かささぎがかけ渡したという天の川の橋のような宮中の御階(みはし・紫宸殿の階段)に、真っ白な霜が降りている。すっかり夜も更けてしまったなあ。

(解説)
・宮中は「天上」とも呼ばれるため、宮中の御殿に渡した「階段」と、「天の川にかけた橋」とをかけた。

・音的にも「階(はし)」と「橋」がかかっている。漢詩によく見られる「見立て」という技法。

・かささぎは黒と白の鳥。織姫と彦星が年に1回七夕に会うときに、天の川にかかって橋になると言われている。

(かささぎ)

星座・夏の大三角形。こと座ベガ(織姫)、わし座アルタイル(彦星)、はくちょう座デネブ(かささぎ)。


(作者)中納言家持(ちゅうなごんやかもち)。大伴家持(おおとものやかもち)(718~785)。奈良時代末期。『万葉集』の歌人であり、『万葉集』をまとめた撰者でもある。三十六歌仙の一人。

家持の父は大伴旅人(おおとものたびと)(酒の歌を多く残した。)

大伴氏は武人として朝廷に仕えた名門で、歌の家柄でもある。

 

29. 心あてに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花 / 凡河内躬恒

29. 心あてに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花 / 凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)

(読み)こころあてに おらばやおらん はつしもの おきまどわせる しらぎくのはな

(訳)慎重に折るなら折れるでしょうか。一面に降りた初霜で見分けが付かなくなっている白菊の花が。


(作者)凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)。三十六歌仙の一人。『古今集』の撰者の一人。

59代宇多天皇、60代醍醐天皇に仕えた。勅撰集に200首の歌が残る歌人。