75. ちぎりおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり / 藤原基俊(ふじわらのもととし)
(読み)ちぎりおきし させもがつゆを いのちにて あわれことしの あきもいぬめり
(訳)あなたが約束してくださった恵みの露のようなはかない言葉を命のように大切にしていたのに、ああ今年の秋もむなしく過ぎていくようです。
(解説)
・興福寺で行われる「維摩講(ゆいまこう)の講師(こうじ)に自分の息子が選ばれるよう、藤原忠通(76)に頼んだが果たされなかった。
(維摩講:仏教の法会の一つ。『維摩経』を講読する行事)
・恋の歌のようにも詠めるのがおもしろいところ。
(作者)藤原基俊(ふじわらのもととし)。藤原俊家の子。藤原道長のひ孫。
源俊頼(74)と並ぶ院政期の歌壇の中心人物。伝統を重んじ保守的な歌風。