12. 天つ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ をとめの姿 しばしとどめむ / 僧正遍昭(そうじょうへんじょう)
(読み)あまつかぜ くものかよいじ ふきとじよ おとめのすがた しばしとどめん
(訳)大空を吹く風よ。雲の中の天への通路を吹き閉ざしておくれ。天女たちの姿をもうしばらくとどめておきたいから。
(解説)
・天つ風・・天の風。空を吹く風よ。「つ」は「の」の意味。
・をとめの姿・・この「をとめ」は「天つ乙女」の意味で天女をさす。五節の舞姫を天女に見立てた表現。
・11月中旬、宮中行事の「豊明の節会(とよあかりのせちえ)」(=天皇が新米を食べる儀式)の「五節の舞姫(ごせちのまいひめ)」を見て詠んだ歌。
五節の舞姫
(作者)僧正遍昭(そうじょうへんじょう)。良岑宗貞(よしみねのむねさだ)。
六歌仙、三十六歌仙の一人。平安京を開いた50代・桓武天皇の孫。良岑安世(よしみねのやすよ)の息子。素性法師(21「いま来むと」)の父。
54代・仁明天皇(833年)に仕え「良少将」「深草少将」と呼ばれた。仁明天皇崩御のあと、35才で比叡山にのぼり出家。僧正は僧侶の中で最も高い位。元慶寺を創設。
美男としても知られ、小野小町(9「花の色は」)とも親しかった。