01古今和歌集 – ページ 3 – 百人一首note

33. ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ / 紀友則

33. ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ / 紀友則(きのとものり)

(読み)ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しずこころなく はなのちるらん

(訳)日の光が穏やかに差している春の日に、桜の花はどうして落ち着いた心なく急いで散ってしまうのか。

(解説)
・桜の儚さ、世の無常などを詠んだ。

・ひさかたの・・光にかかる枕詞。天、空、月などにかかる。


(作者)紀友則。『古今和歌集』の撰者。三十六歌仙の1人。

紀貫之(35「人はいさ」)のいとこ。『古今和歌集』の完成を前に亡くなった。

 

34. 誰をかも しる人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに / 藤原興風

34. 誰をかも しる人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに / 藤原興風(ふじわらのおきかぜ)

(読み)たれをかも しるひとにせん たかさごの まつもむかしの ともならなくに

(訳)誰を友としよう。心をかわす古くからの友人もいなくなった今となっては。あの年老いた高砂の松も昔からの友ではないのに。

(解説)
・高砂(たかさご)・・播磨の国(兵庫県・高砂市)の海岸にある、長寿の松の名所。


(作者)藤原興風(ふじわらのおきかぜ)。琵琶や琴の名手だった。

凡河内躬恒(29「心あてに」)や紀貫之(35「人はいさ」)らと歌会をしていた。三十六歌仙の一人。

35. 人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける / 紀貫之

35. 人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける / 紀貫之(きのつらゆき)

(読み)ひとはいさ こころもしらず ふるさとは はなぞむかしの かににおいける

(訳)あなたは、さあ、心変わりしているのかお心は分かりません。昔なじみのこの里では梅の花が昔と変わらず咲き誇っているのです。

(解説)
・大和(奈良)の初瀬・長谷寺(はせでら)へ行ったときに詠んだ歌。長谷寺は十一面観音で有名。(74)にも初瀬が出てくる。


(作者)紀貫之。紀友則(33「ひさかたの」)の従兄弟。『古今和歌集』の撰者。仮名序(仮名の序文)を書き、その中で六歌仙についても述べた。

『土佐日記』の作者。女性を装い、かな文字で書かれた日本最古の日記文学。

 

 

 

36. 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ / 清原深養父

36. 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ / 清原深養父(きよはらのふかやぶ)

(読み)なつのよは まだよいながら あけぬるを くものいずこに つきやどるらん

(訳)夏の夜は短いのでまだ宵(夜)だと思ってるうちに開けてしまった。雲のどのあたりに沈み切らなかった月は宿にしているのだろう。

(解説)
・「宵」・・夜に入ってすぐ。「夕」のあと。「夜半」の前。


(作者)清原深養父(きよはらのふかやぶ)。清少納言(62「よをこめて」)の曾祖父。清原元輔(42「契りきな」)の祖父。紀貫之(35)らと交流があった。琴の名手。