6. かささぎの渡せる橋に置く霜の 白きを見れば夜ぞふけにける / 中納言家持

6. かささぎの渡せる橋に置く霜の 白きを見れば夜ぞふけにける / 中納言家持

かささぎのわたせるはしにおくしもの しろきをみればよぞふけにける(ちゅうなごんやかもち)

(訳)かささぎがかけ渡したという天の川の橋のような宮中の御階(みはし・紫宸殿の階段)に、真っ白な霜が降りている。すっかり夜も更けてしまったなあ。

(解説)
・宮中は「天上」とも呼ばれるため、宮中の御殿に渡した「階段」と、「天の川にかけた橋」とをかけた。音的にも「階(はし)」と「橋」がかかっている。漢詩によく見られる「見立て」という技法。

・かささぎは黒と白の鳥。織姫と彦星が七夕に年に1回会うとき天の川にかかって橋になってくれると言われている。

夏の大三角形。こと座ベガ(織姫)、わし座アルタイル(彦星)、はくちょう座デネブ(かささぎ)


(作者)
中納言家持(ちゅうなごんやかもち):大伴家持(おおとものやかもち)(718~785)。奈良時代末期。『万葉集』の歌人であり、『万葉集』をまとめた撰者でもある。三十六歌仙の一人。

家持の父は大伴旅人(おおとものたびと)(酒の歌を多く残した。)

大伴氏は武人として朝廷に仕えた名門で、歌の家柄でもある。