87. 村雨の 露もまだひぬ まきの葉に 霧たちのぼる 秋の夕暮れ / 寂蓮法師(じゃくれんほうし)
(読み)むらさめの つゆもまだいぬ まきのはに きりたちのぼる あきのゆうぐれ
(訳)にわか雨が降ってきて、そのしずくもまだ乾ききらない杉や槇の葉に、霧が立ち上っている秋の夕暮れだなあ。
(解説)
・水墨画を眺めているような幻想的な秋の情景。
・村雨(むらさめ)・・秋から冬にかけて降る激しいにわか雨。
・まだひぬ・・まだ乾かない
(作者)寂蓮法師(じゃくれんほうし)。藤原定長(さだなが)。『新古今集』撰者だが完成前に亡くなる。
幼少期に藤原俊成の養子となるが、実子の藤原定家が生まれたあと30代で出家。
『新古今集』の三夕(さんせき)の一首、「寂しさはその色としもなかりけり槙立つ山の秋の夕暮れ」の歌もある。