叙景歌 – 百人一首note

64. 朝ぼらけ 宇治の川霧 絶えだえに あらはれ渡る 瀬々の網代木 / 権中納言定頼

64. 朝ぼらけ 宇治の川霧 絶えだえに あらはれ渡る 瀬々の網代木 / 権中納言定頼(ごんちゅうなごんさだより)

(読み)あさぼらけ うじのかわぎり たえだえに あらわれわたる せぜのあじろぎ

(訳)夜がほのぼのと明けてきて宇治川にかかった霧が途切れてくると、現れてきたのは川の浅瀬にある網代木だった。

(解説)
・朝ぼらけ・・夜明け方

・あじろぎ・・魚をとるしかけ。冬の風物詩。

・平安時代には数少ない叙景歌。


(作者)
権中納言定頼(ごんちゅうなごんさだより)。藤原定頼。和歌や書道、管弦に優れる。父は大納言公任(55「滝の音は」)。

小式部内侍をからかったが、60「大江山」で返された。

79. 秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出ずる月の 影のさやけさ / 左京大夫顕輔

79. 秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出ずる月の 影のさやけさ / 左京大夫顕輔(さきょうのだいぶあきすけ)

(読み)あきかぜに たなびくくもの たえまより もれいずるつきの かげのさやけさ

(訳)秋風が吹いて横にたなびいている雲の切れ間から漏れ出てくる月の光は明るく澄みきっている。

(語句)
・月の影・・月の光

・さやけさ・・さやけし(澄み切っている)の名詞化。

(解説)
・秋風と月を取り合わせて清々しい光景を詠んだ。


(作者)左京大夫顕輔。(さきょうのだいぶあきすけ)。藤原顕輔。藤原清輔朝臣(84「ながらえば」)は息子。父・顕季(あきすえ)から歌道の家(六条藤家)を継ぐ。

崇徳院(77「せをはやみ」)から『詞花和歌集(しかわかしゅう)』の撰者に命じられた。