94. み吉野の 山の秋風 さ夜ふけて ふるさと寒く 衣打つなり / 参議雅経(さんぎまさつね)
(読み)みよしのの やまのあきかぜ さよふけて ふるさとさむく ころもうつなり
(訳)吉野の山の秋風が吹くころ、夜も更けて、この古い里は寒さが身にしみて、寒々と衣を打つ音が聴こえてくる。
(解説)
・山に響く衣を打つ音の寂しさ
・坂上是則(31「朝ぼらけ」)の歌をもとに詠んだ本歌取りの歌。
「み吉野の 山の白雪 つもるらし ふるさと寒く なりまさるなり」。
・衣を打つ、砧(きぬた・木槌)の響きは漢詩(李白)の世界から取り込まれた情趣。
(作者)参議雅経(さんぎまさつね)。藤原雅経。『新古今和歌集』の撰者の一人。
けまりの名門・飛鳥井家を興した。(本歌取りの元の歌、坂上是則も蹴鞠の名手であった)。後鳥羽上皇より「蹴鞠長者」と評される。