8. わが庵は都のたつみしかぞ住む 世をうぢ山と人はいふなり / 喜撰法師
わがいおはみやこのたつみしかぞすむ よをうじやまとひとはいうなり(きせんほうし)
(訳)
私の草庵は都の東南にあってこのように穏やかに住んでいる。なのに世間の人々は辛い世から逃れて宇治山に隠れ住んでいると噂しているようだ。
(解説)
・宇治へ隠れ住んでいるという噂を笑い飛ばすようなユーモアのある一句。
・「宇治」と「憂し(うし)」との掛詞。
・「なり」は伝聞の助動詞。「~のようだ。」音(ね)あり。
・辰巳・巽・たつみ・・東南。(方角。子は北、卯は東、午は南、酉は西。)
・宇治山は現在では喜撰山(きせんやま)と呼ばれる。
・宇治は早くから世間の俗塵を離れた清遊の地とされ貴族の別荘も多かった。
(作者)
喜撰法師。六歌仙の1人。仙人となり雲にのって飛び立ったという伝説が残る。