98. 風そよぐならの小川の夕暮れは みそぎぞ夏のしるしなりける/従二位家隆 – 楽しく百人一首

98. 風そよぐならの小川の夕暮れは みそぎぞ夏のしるしなりける/従二位家隆

98. 風そよぐならの小川の夕暮れは みそぎぞ夏のしるしなりける/従二位家隆(じゅにいいえたか)

かぜそよぐ ならのおがわの ゆうぐれは みそぎぞなつの しるしなりける

(訳)風がそよそよと音を立てて楢の葉に吹きそよぐ、ならの小川の夕暮れは、夏越しのみそぎの行事だけが、夏であることのしるしなのだなあ。

(解説)
・年中行事の一つ「水無月ばらえ」。川で身を清め、罪や穢れをはらう。旧暦6月29日(現在の8月7日ごろ)。次の日から秋(立秋)になるので「夏越しのはらえ」とも言う。

・「ならの小川」は奈良ではなく、京都・北区の上賀茂(かみがも)神社の境内を流れる御手洗川(みたらしがわ)のこと。


(作者)従二位家隆(じゅにいいえたか)。藤原家隆。藤原定家のライバル。定家は「火」、家隆は「水」を詠った。

「新古今集」の撰者のひとり。妻は寂蓮法師(87「むらさめの」)の娘。寂蓮法師は義父にあたる。

家隆は後鳥羽院(99「ひともおし」)が隠岐に流されたあとも文通を続けた。