16. 立ち別れいなばの山の峰におふる まつとし聞かば今帰り来む/中納言行平(ちゅうなごんゆきひら)
たちわかれ いなばのやまの みねにおうる まつとしきかば いまかえりこん
(訳)
私はお別れして因幡の国(鳥取県)に行きます。稲葉山の峰に生える松のように皆さんが私の帰りを待つと聞いたならすぐに帰ってきましょう。
(解説)
・「因幡」と「稲葉山」、「待つ」と「松」がかかっている。
・いなくなった猫が帰ってくるおまじないとして読まれる。
(作者)
中納言行平。在原行平(818~893)。17「ちはやぶる」在原業平(ありわらのなりひら)の異母兄。
51代・平城天皇(へいぜいてんのう)の孫。阿保親王(あぼしんのう・平城天皇の第1皇子)の皇子。業平とともに皇族を離れた。
陽成天皇(13つくばねの)、光孝天皇(15きみがため)に仕えた有能な官吏でもあった。
38才で因幡(鳥取県)の国司、因幡守となった。任期は4~5年。京都に奨学院という学校を創設した。